デザインを変えるきっかけ、UXリサーチ
デザインをリニューアルした経験がございますか?
デザインをリニューアルするのにはいくつかの理由があります。
さまざまな要因を分析して、最終的に目標とする価値を追いかけてみると、そこには「ユーザー体験(カスタマーエクスペリエンス)」と「ビジネス」があります。
より良い顧客体験を提供するデザインは、サービスを継続的に利用するようにして、直帰率を減らすので、ビジネスに貢献できます。
多くの企業が新しいOS、システム、デバイスに合わせてデザインをリニューアルする理由もユーザー体験を高め、ビジネスを継続できるようにする必須要因だからです。
問題は、デザインのリニューアルには費用がかかるということです。
ユーザーと同様に、企業は費用を効率的に使用したいです。だから本当にユーザーが望むこと、不便と感じることをユーザーの声を通じて聞きたいと思います。
なので、UXリサーチが国内企業から歓迎されていることも結論、「効率」、「ビジネス改善」に向いているからです。
スティーブ・ジョブズに対する代表的な誤解は彼がユーザーの声に耳をすますより自分の直観、哲学に従ってデザインをしたということです。
「消費者に、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。」と言って、UXリサーチが無用だと思ったという誤解がありましたが、この言葉の本当の意味は「価値を込めたものはユーザーに言葉で伝えるより、プロトタイプを通じて直接使わせてわかること」という意味です。
ユーザーに聞いてもユーザーは何が不便なのか、何を望むのかはっきりと分からないからです。
スティーブ・ジョブズはユーザーを探求して、ユーザーをよく知っている専門家を積極的に採用しました。自ら聞かなくても、ユーザーが何が欲しいのかはっきりと知っていると確信しました。
ウィルター・アイザクソンが書いた『スティーブ・ジョブズ』には、ジョブズがユーザーが望むユーザー経験にどれほどこだわってたのか書かれています。
もし10秒、起動が速くなれば、何十人もの命が救えるんだ。
If it could save a person’s life, could you find a way to save ten seconds off the boot time.
ある日、ジョブズが Macintosh の起動が遅く、イライラしているときに、担当者を呼び出して
ウィルター・アイザクソン 『スティーブ・ジョブズ』
「もっと起動を速くろ」
と不満をぶつけていました。言い訳をする担当者を無視して、次に出てきたのがこの言葉です。さらにジョブズはその理由を
「将来的には、マックユーザーは500万人に達する。彼らが1日一回は起動すると仮定するとして、起動時間を10秒短くすれば何が起こるか? 500万人分だから、1日で5,000万秒も短縮できる。一年なら、人間の寿命の何十倍にもなるだろう。考えてみろよ。もし10秒起動が速くなれば、何十人もの命が救えるんだぞ」
と、かなり強引なこじつけを唱えます。しかし、それからわずか2〜3ヶ月後には、起動時間が10秒以上短縮されたのです。このようにジョブズには、マックチームに「現実歪曲空間(Reality Distortion Field)」と名付けられた不思議な力があったとされています。それは現実的に厳しいスケジュールや常識的に難しい要求でも、ジョブズに説得されてしまうと、誰でも何でも受け入れてしまうという能力でした。ジョブズならではの説得力というよりも、何とかしてみようと思わせる人間力があったのかもしれません。
ユーザービリティテスト(UT、Usability Test)で一般的に採用されている2つの尺度は、タスクの成功率と所要時間です。
すべてのデザインを変更するとき、「ユーザーが意図したとおりにタスクを完了、成功させることができたのか」、または「より早くタスクを完了することができたのか」は正当性を確保する方法です。
ジョブズがラリーを説得するように、ユーザーがやりたいことをするのに待たなければならない時間を減らすことは、使いやすさを確実に改善することであり、短時間で計算できる最も効率的で重要なのがユーザービリティテストです。
タスクの所要時間を短縮するデザインはどんな価値がありますか?
社内のイントラネット、グループウェアを例えると、社員は同僚を検索してメールを送信するタスクが頻繁に発生します。
多数の社員はメールを送ったり、メッセンジャー、通話、決済パスを入力するときに使用するので、この機能は1日1回以上は使用する機能だと思います。ここで、アドレス帳からメールアドレスを調べて、「受信者」に入力して、メールを打つのにかかる時間を45秒とします。
もし、検索結果からクリック可能な社員の名前と部署、メールアドレスを同時に入力できるようになって所要時間を30秒まで短縮できるのであればこの会社はどれほど利益を得るのでしょうか?*
正確な計算をするのには、いくつか前提が必要です。
- 社員はこのタスクを1日に何回実行したのか?1日1回と仮定
- 社員の時給はいくらなのか?時給1500円と仮定
- 社員の数は何人?100,000人と仮定
上記のように仮定をして計算してみると次のようになります。
- 現在のタスク所要時間 = 45秒 = 45/60分 = 45/(60*60)時間 = 0.0125時間
- 社員ひとりあたり1日のタスク費用= 0.0125時間* 1,500円= 18.75円
- 全従業員の1日のタスク費用 = 18.75円 * 100,000人 = 1,875,000円
- 全従業員の1年間のタスク費用= 1,875,000円* 220 = 412,500,000円
上記の時間を45秒から30秒まで短縮したら、どのくらいのコストが節約できるんでしょう!
- 新しいタスク所要時間 = 30秒 = 30/60分 = 30/(60*60)時間 = 0.0083時間
- 従業員あたり1日のタスク費用= 0.0083 * 1,500円 = 12.45円
- 全従業員の1日のタスク費用 = 12.45円 * 100,000人 = 1,245,000円
- 全従業員の1年間のタスク費用= 1,245,000円* 220 = 275,000,000円
この会社の場合、節約できる金額は約1.4億円程度です。
会社イントラネットを使うユーザー数が10万人超える企業は少ないと思いますが、
Slackのように毎日1000万人を超えるユーザーが使用しているB2Cサービスとか、ユーザーが100万人を超えるEコマースのようなサービスで毎日2回繰り返さなければならない作業、(例えばログインや決済、配送先の変更、配送メッセージの入力など)により、時間が短縮になれば、この利益になる費用はより大きくなると思います。
実際、UXリサーチでデザインリニューアルをして節約できたるコスト、(または利益)をシミュレートする際にはもっと保守的に計算しますが、ここで分かるのはデザインリニューアルすることの理由が「ただそのデザインが良いから。」ではなく「確かに改善(いろんな要素が..改善!)されるから」というろころです。費用で計算しなくても、スティーブ・ジョブズが起動時間にこだわったように単純に時間を短縮できることはユーザー体験から非効率性を減らすことです。
参考
*『THINK LIKE A US RESEARCHER』, Davis Travis, Phillip Hodgson, p249 -253